盲目のお姫様と白騎士






「ねぇ、今日は空が綺麗?」
「えぇ、とても。」

森の中の小さな館。
古びたその部屋の中で微笑むのは盲目の少女。

「そう、やっぱりね。」
「わかるんですか?」

そう問うのは白い騎士服を着た騎士。
純白の騎士。
その主には見えることが無くとも、彼が汚れのついた騎士服を着ることなどありえない。

「勿論。小鳥達が教えてくれるのよ。」

少女は楽しげに、窓の外へと顔を向けた。
騎士が今朝開いた窓の外には、どう?と自慢気にも見える小鳥の群れ。

光を感じ取れない少女は、どんなわずか音も聞き取る。
ただ聞き取るだけではなく、彼女はどんな動物の言葉も理解しているかのような様子を見せるのだった。

「そうでしたね。」

少女のことを疑いもしない騎士は、そう言うと、彼女の手を取る。

「せっかくのいい天気です。朝食は外で、どうですか?」

そして彼女を横抱きにして運ぼうとする騎士の手を、彼女はやんわりと拒んだ。

「森の中ぐらい、一人で歩けるわ?」
「申し訳ありません。つい。」

謝罪と共に、騎士は手をはなす。
しかし、そのまま引き下がりはしなかった。

「この森は、貴女の庭も同然。たとえ貴女が一人で走ろうと、怪我などすることはないでしょうね。
 それでも、私は心配なのですよ。」
「まあ。私の騎士ったら、心配症なのね。」

呆れたように、肩をすくめる少女。

それは、いつものやり取り。
そして、もちろんその後も。


少女は、一度は拒んだ手を取ると、騎士と2人、手をつないで歩き始めた。


これが、2人の最大の譲歩。












c 睦月雨兎