桜の木の下で




四月の始めごろ、俺は特に用もなく外に出ていた。
まだ少し肌寒い風の中、太陽の光はとても温かく感じられた。

偶然公園の前を通ると桜を柄にもなく綺麗だと感じた。
そのまま、俺は立ち止まって桜を下から眺めていた。

そんな俺はこの春から中学生だ。
小学校のときはずっと塾に通わされ、中学受験は難関校ばかり受けさせられた。

結果は最悪だった。
全ての学校に受からず、俺は地元の公立中学に行くことになった。

俺の両親は医者で、俺に後を継がせようと張り切っていたのだった。
その希望を俺は無残にもぶち壊した。
親の目は俺ではなく弟たちに向けられるようになった。
それでも、高校は難関校へ入らせようと試行錯誤していたりする。

俺には分からない。
長男である俺が自分の親の言いなりになる理由が。

別に高校はどこだっていい。
どこに行こうが俺がしたいのは野球。
それだけで十分なのだ。

それなりに成績は上位を占めてきた。
それでも高校に受からなかったのは難関過ぎたから。

少年野球にも入らせてもらえず、自分で練習のみ。
周りの奴らより野球は下手。

結局俺は弱い人間なんだ。
何もかも中途半端で何も成し遂げられなかった。

だから、俺は決意した。
この桜の木の下で、中学で変わると。
弱い人間から強い人間に。

そんなことを思っていると、ふと隣に自分を見る視線を感じた。
顔を横に向けるとそこには一人の少女が立っていた。

頭に縁のある帽子。服はワンピースの上にカーディガンを羽織っている。
そして黒色のハイソックスにスニーカーを履いていた。

髪は三つ編みのせいか、とても穏やかな性格に見えた。

俺がじっと見ていると、少女の顔が少しゆるんだ。

「くすっ。」

その少女は小声で笑って俺の目の前から去って行った。



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© 浅海檸檬