第2話




日本にはアシュリー学園という幼稚園から大学院まである大きな私学がある。

日本の中でも有名な学校で偏差値は高く、また、帰国子女を受け入れてくれる学校で もあるのだ。

そのアシュリー学園に千空、まな、錬太は通っている。

そして今日も普段と同じように千空は先程まなと分かれ、自分の教室へと1人で向 かっていた。

「おはよう、千空。」

ひょっこり顔を出したこの少年は大地錬太だ。
髪は少し茶色っぽく、日本人であり、眼鏡をかけている。
祖父から錬金術の魔力を受け継いでいる。

「錬太。昨日の話、聞くか?」
「うん。」

そうして2人は教室へ入っていった。クラスは共にAクラス。一番成績の良いクラス だ。


「それから、雨が降ってきてから走って帰った。」
「怪我が無くて良かったよ。」
「当前だ。」

千空は即答した。

「そっか。」

そう言って錬太は微笑んだ。

昨日の戦いを話す2人。

錬太はこれを喜んで聞く。自分が夜の見回りに参加できていないからだ。錬太は錬金 術を自分の思うように使いこなせていないのだ。

「あのさ、」

錬太が少し躊躇いながらそう言った。

「なんだ?」
「僕なんとか錬金術を前よりは使いこなせるようになったから、夜の見回りに参加し てもいいかな?」
「いつそんな練習したんだ?」

錬太はそう聞かれると予知していたかのように頷いて話し始めた。


それは、7月7日の前日、7月6日のこと。

錬太は千空と自分の誕生日を前に、"親友へのプレゼント"を考えていた。

いつもは母の手作りケーキを自分の家で食べてもらい、盛大なパーティーを行ってい たのだが、この日はそういうわけにはいかなかったのだ。

それは千空が16歳になったから。

「遺言を読まなければいけないんだ。」

そう言った千空の表情は真剣だった。

そんな千空を想い、錬太はあることを思いついた。それは錬金術を極めること。そう すればこれから夜の見回りには戦力になれる。

(これなら16歳の誕生日プレゼントらしいよね。)

そう思ったのだった。

6日から錬太は徹夜で練習した。

何度やっても石は金属に変わらない。

7月7日朝7時ごろ。その時雨が降ってきた。

(これはちょっとやばいよね。)

錬太がそう思ったのは、失敗したら雨が金属に変わってしまうから。

しかし、錬太は練習を続けた。そして、

「できた…!」

石は見事に銀色に変わっていた。
時間はかかったが、錬金術の中でも難しい"銀"に変える魔法が使えたのだ。


「良かったな、錬太。これなら夜の見回りに参加してもいいと思う。それにしても、 あの風邪は雨にうたれてひいたものだったのか。」

7月7日は"風邪をひいた"と錬太は千空にそう伝えていたのだ。

「ううん。」

錬太は首を横に振った。

「本当はね、」


石を銀に変えることができ、錬太の緊張は一気に解けた。

グサッ!

その時、鈍い音がした。

緊張が解けたことにより、誤って雨の雫を銀に変えてしまったのだ。そしてそれは鋭 い刃を持ち、錬太の肩に突き刺さっていた。


「大丈夫だったのか!?」

千空が焦ったように立ち上がった。

「母さんがちょうど起きてたんだ。だから大丈夫だったよ。」
「怪我は!?傷は残っているのか!?」
「焦らないで、千空。僕はこの通り元気なんだから。傷は大したことないよ。」

錬太がそう言ったにも関わらず、千空は急いで錬太の肩を見た。

千空の顔色が青ざめるのがわかる。

「あいつらの仕業だ…。」
「え?どういうこと?」
「俺が16歳になった日からまた黎明の天秤は動き始めてたんだ!」
「でも僕が誤って起こしたことだよ?」

千空は首を横に振った。

「いいや、奴等の痕跡が残っている。」
「じゃあ…。」
「こっちも動かないといけない。」

これから本格的な戦いが起こり始めようとしていることを、2人は感じた。



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© 浅海檸檬