第26話




コンコン。

華恋の部屋をローレンスが2度ノックした。

「起きてますか?」

ローレンスの言葉で華恋は目が覚めた。

(今何時?)

近くにある目覚まし時計に目をやった。
時刻は9時過ぎを指していた。

「ごごごめんなさい!」
華恋んは飛び起きて、自分の部屋のドアを開けた。

「すいません。起こしてしまいましたか?」
ローレンスは申し訳なさそうに言った。

「いっいえ。とんでもない!朝食ですよね!すぐ支度します!」
そう言って華恋はドアを閉めた。



華恋がバタバタと1階に下りた。
ダイニングにはローレンスしかいかなった。

「あれ、みんなは?」
「あそこにいます。」
そう言ったローレンスが指を向けた先には本がたくさんある部屋があった。

「ああ!文化祭の!」
「そうです。」
ローレンスはクルミパンを用意してくれた。



部屋に入るとみんな同時に華恋を見た。
「ごめん。寝坊しちゃって。」
「いいよ、いいよ。」
錬太がそう言う。

「華恋の本は選んでおいた。」
千空は合計7冊の本を華恋に渡した。
「ありがとう。」

「じゃあ、あたしは千空が選んでくれてたし、お先に。」
明里紗は華恋より量の多い本を両手で運んでドアの近くへ行った。
千空は慌ててドアを開けた。
「ありがとう、千空。」
「運ぼうか?」
その言葉は特別な意味を持っていないけれど、”2人っきりになる”ということがわかっていた。
「いや、いいよ。1人で行ける。」
「なら…。」
千空はそう言って本をまた選び始めた。

千空は明里紗と華恋の分まで選んでいたので自分の分まで探すのに少し時間がかかった。
「じゃあ、そろそろ僕も自分の部屋に戻るよ。」
錬太は5冊くらい持って部屋を出た。
「じゃあ、わたしも。」
「俺も。」
「僕もですー!」
そう言って華恋、千空、まなが立ち上がった。

「悠夜はまだいるのか?」
「まだここにいる。」
「また後でここに来てもいいんだぞ?」
「じゃあそうする。」
そう言った悠夜の本は20冊近くあった。
「多くない?」
華恋が言う。

「大丈夫だよ!」
「半分にすればいいですよー。」
まながそう言うと悠夜は急に不機嫌になって「うるさい!」と言って部屋を出た。
結局本は5冊だけ持って行った。

「何であんなに怒ってるんですかー。」
まなは呟くようにそう言った。
「あー。やっちゃったー。」
華恋はそう言ってベットに寝転んでから慌てて口を抑えた。
隣の部屋は錬太の部屋。聞こえたかもしれないと慌てたのだ。

悔やんだのは寝坊してしまったこと。

昨日あれこれ1人で悩んで結局水穂にメールした。
メールしたのは8時頃だった。返事が返ってくるまで少し時間がいった。

『なんて言えばいいの?』
『「好き」って言えばいいの。』
『それだけ?』
『だって伝えたいだけなんでしょ?』
『そうだけどー…』
『「付き合って」って言いたいの?』
『うん。できたら。』
『じゃあ…「良かったら付き合って下さいって言ったら?」』
『なるほどー。』
『とりあえず、思ってること言えばいいの。じゃあ、あたし用事あるからそろそろメール終わるよ。』
『分かった―。ありがとう!また明日メールするね。』

水穂にメールすることによってなんとか落ち着いた。

10時過ぎてから早速後悔した。
決心ついた昨日のうちに言っておけば良かったものの、「明日にしよう。夜は非常識だし。」という考えで、ずっと部屋にいたのだが落ち着かない。木を紛らわすために本を読んでみたが、やっぱり考えてしまう。
そう悩んでいるうちに時刻はもっと非常識な時間になっていく。

(寝たら考えないよね…?)

そう思ってベットに入ったけれど、余計に考え込んでしまう。
それがいつの間にか寝ていて今日の朝に至る。

「はぁ…。」
溜め息をついた。自分では少し長かったと思うくらい。
ため息ついたら幸せが逃げるなって言うけれど、華恋はそんなことも考えられないくらいだった。

好きな人の前では恥をかきたくなかった。
慌ててた。鏡に自分の顔を映して髪を確かめる。とりあえず、髪は整っていた。

――いいよ、いいよ。

今朝の錬太の優しい言葉がふと頭に浮かんだ。
やっぱり好きだ。
そう思う。だから華恋は行動に出た。決心が固いうちに。



コンコン。
錬太の部屋をノックした。

「どーぞー。」
中から声がした。
「お邪魔します。」
そっとドアを開けた。
「かっ華恋ちゃん!?どうしたの?」
「ちょっと言いたい事があって。」
錬太は驚いている。

「どうしたの?」
「えっと…あのね…。」
華恋の言葉が止まっても錬太は急かさず黙って待っていてくれる。やはり錬太は優しい。些細なことだけれど、とても大切なことだと思う。何故なら、そういうところに惹かれたのだから。

実際には5分もたっていなかったけれど、華恋は何時間も立っていたように思えた。

「わたし、錬太君のことが好きのなの。」
と、いうまでの時間が。

華恋から思いがけない言葉が出た。いつか錬太が華恋に言おうと思っていた言葉。
さっきよりも長い時間が続いた。
「本当…だよね?」
少し疑ってもいいと思った。何故なら華恋自身から”千空が好き”というように言っていたから。

「本当だよ。」
「僕も華恋ちゃんが好きだよ。」

本当?

そう聞かなくてもちゃんと本当だとわかっていた。
お互い本当に嬉しかった。笑顔だったのだ。



「千空君たちにどうやって言う?」
その後、華恋は錬太の部屋で部活の原稿を書くことにしていた。
「昼食の時に…僕から言おうか?」
「言ってくれるの?」
ここまで錬太に頼っていいのだろうか。華恋はそう思ったのだ。

「いいよ。僕から告白できなかったしね。」
錬太は錬太なりに、自分から告白したかったのだ。
そのことは華恋にも分かっていた。
「じゃあお願いします。」
「うん。」
そう言って2人は微笑み合った。
何故か昼食の時間が待ち遠しかった。




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© 浅海