第4話




早速その夜、千空の家で話し合いが行われた。

だが、錬太はまなとローレンスに会うのは初めてだったので、話し合いより先に歓迎会を交えた自己紹介が行われた。

ローレンスが紅茶を並べ終えるとまなが真っ先に立った。

「ボクはまなっ!まな・リーズロット・御円です!まなと呼ぶです−!次はローレンス様!司会はボクです。勝手に決めたけど。」

次の出番は自分だということに少し戸惑ったようすで、ローレンスは静かに立った。

「ローレンスと申します。名前は主につけてもらいました。常に主たちの傍で言われた仕事をし、戦いのときは戦力になります。」

ローレンスは淡々とした口調で話し終えた。

「最後はそこのメガネ君です。今日の主役は君ですー。」
「僕…?」

錬太は「メガネ君」と呼ばれたので少し戸惑ってしまった。

「えーっと、大地錬太です。千空のクラスメートで、いつもお世話になってます。ちょっとだけ錬金術が使えます。」

錬太はあえて親友という言葉をさけた。少し、その言葉を使うのが恥ずかしかったのだ。

「では錬ちゃんですね。千空、今日の本題は何ですか?」

千空はやっとかというような顔で立ち上がった。

「今日は俺の隣のクラス、Bクラスの佐藤華恋をどうやって仲間にするか話し合うんだ。佐藤は人や物の気配を読めるらしい。かなりの技だ。どう思う?ローレンス。」

千空はローレンスに問いかけた。

「そうですね。自覚をしていないなら仲間にすることは、難しいと思います。"魔法が使える"ということを教え、拒絶反応をおこされても困ります。」

ローレンスは冷静にそう言った。

「そうだな。」

千空が短く返事した後に、まなが元気よく立ち上がり言った。

「錬ちゃんは錬金術が使えるです。千空は剣技なので錬ちゃんが錬金術をさっちゃんに見せまして、『これが魔法だ。』と言ってみるですー。」
「え!?僕!?無理だよ。」

錬太が目を丸くして言ったにも関わらず、

「それ、いいかもしれない…。錬太!練習しよう!」

と千空はまなの案に賛成した。
錬金術が一番相手に見せやすいと千空は考えたのだ。

「頑張って下さい。」

とローレンスが声をかけた。


それから、2人は練習部屋に行った。

「じゃあ、まず上達した錬金術を見せてくれ。」
「わかった。じゃあ何か金属に変えてもいいものを用意しなきゃ。」

練習場で千空は数枚の紙を用意した。

「これでもいいか?」
「うん。ちょっと時間かかるよ。」

錬太はしばらくの間黙り込んだ後、

「アルキミーア・アルジェント」

と呪文を唱えた。
しかし、紙に変化はなかった。

「あ、やっぱり駄目か…。」
「今のは?」
「銀に変えようと思ったけど駄目だったみたい。」
「諦めず、もう一回やってみよう。」

千空がそう言った途端、邪気を感じ取った。

錬太にも分かるくらいの強さ。いつもより手強そうだ。

もう屋敷の中に入っている。

急いで廊下に出ると、小さな物体が走ってきた。
ローレンスが猫形の遣いを送ってきたのだ。

「まなが傷を負いました。動けません。至急援護をお願いします。」

千空達は猫形の遣いが喋り終える前にはもう、さっきの部屋に走って行っていた。
錬太は急いで千空の後を追いかけた。


「まな!」
「ちあき!」

千空はまなを見て顔が少し強張った。

「ごめんなさいです…。足を怪我して魔法陣かけないです…。」

まなの右足からは大量に血が出ていた。
辛うじて立てたとしても、魔方陣を一瞬では描けなさそうだった。

その傍らでは、ローレンスは懸命に戦っていた。
1人で数体の魔物を相手するのは困難なことだ。

「俺は戦う。錬太はまなの手当てをしてくれ。」
「わかった。」

錬太は近くの救急箱から包帯を取り出し、出血を止めた。

血が出なくなるのにそんなに時間はかからなかった。

千空が戦いに参加してからでも、千空とローレンスは苦戦していた。
相手は3体。力が強い上に、数が多いのだ。

(こんなときこそ、錬金術が使えれば…。)

錬太は拳にぐっと力を入れた。そして立ち上がり、そして魔物の方に立ち向かって行った。

「錬ちゃん、危ないです!」

しかし、まなの声は錬太に届かなかった。




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