第46話




いよいよ、文化祭当日。
今日は魔法現象研究部のメンバーで待ち合わせしての登校だ。

「なんかワクワクするね。」
華恋がそういうと錬太は
「そうだね。」
と微笑みながら返す。

学校にはいつもより多くの生徒が既に来ていて、装飾されている。
いつもと違う雰囲気の学校は更に生徒の興奮を高めた。

でも、千空だけは浮かない様子だ。

「千空、そんなにホスト嫌なの?」
華恋が不思議そうに問う。
「嫌だ。錬太は制服で良いよな。」
千空は錬太の方を見た。

「みんなで行こうね。」
そう言ったのは明里紗だ。
千空をからかって少し満足そうな笑みを浮かべている。

「はいですー!」
そう元気良く返事したのはまなだ。

「部長は当番とかねぇのか?」
悠夜は不思議そうに聞いた。
「無いよ。映画だからね。」

「じゃあずっと一緒に回れるですかー?」
嬉しそうにまなが言う。
それを見て悠夜はムッとした。
「お前、俺と回るって言っただろ。」
「みんながいないときのことです。」

「2人で約束してたのかい?」
明里紗の問いに悠夜は頷くが、まなは否定する。
「みんな当番があるだろうからって。でも姐御はないから関係ないです。」
「まあまあ、その時になったらで良くない?今日僕たち当番なの昼からだから。」
そう言ったのは錬太だ。

「え、錬太君昼からなの?わたしは朝からなんだけど。」
「え、そうなの?」
2人で驚いたまま向き合って静止した後、2人は同時に肩を落とした。
その光景を見て明里紗がクスッと笑った。

「2人で何も相談してなかったのか?」
飽きれたように千空が言うと、2人は同時に頷いた。
「何も考えてなかったからね。」
華恋は笑いながらそう言った。
「まあ明日は2人ともあいてるからいいかな。」
錬太も笑いながら言う。

「明日は俺達の劇だぜ!」
そう言ったのは悠夜だ。
「そういえば台本上手くいったの?」
華恋が尋ねる。
白雪姫をするのにあたって、悠夜が魔女なのは問題だったのだ。

悠夜が得意げに言おうとするところにまなが口を挟む。
「それは明日のお楽しみですー!」
「それは楽しみだねえ。」
そう言ったのは明里紗。

開会式はグラウンドにて行われる。



パンパン。

火薬音と同時に始まった開会式。
「これより、アシュリー学園文化祭開会式を始めまーす!」
司会所がそう言うとあちこちから歓声があがる。
全校生徒がグラウンドに集まると混雑するので、校舎の窓、屋上などから顔を出している生徒が大勢いる。

「まずは学校長先生の話です!」
普通の学校の生徒なら学校長先生の話は嫌がるところだが、アシュリー学園の学校長はこういうときにはそれなりのことをしてくれる。
仮装をしながらの登場だ。そして、なるべく話も短い。
学校長の話が終わるとPRが始まる。

PRは幼等部から始まった。
悠夜とまなのクラスは主要メンバーでの歌だった。もちろん白雪姫の歌だ。
次々と進められるPR。

いよいよ千空のクラスの番だ。
ものすごく嫌そうな千空が真ん中にいる。その隣にブレザーを着た錬太もいる。
「コスプレ喫茶ですー!よろしくお願いしまーす!」
代表の女の子がそう言うと、黄色い歓声が起こる。

「やっぱ凄い歓声だね。」
そう言ったのは水穂。華恋と一緒に教室の近くの窓からグラウンドを眺めている。
午前中当番なので、教室の前にいるのだった。
「ランキングはやっぱり千空君かな。」
「多分ね。」

そんな会話を交わしていると明里紗のクラスの番が来た。
恋愛の映画なので自転車の二人乗りのワンシーンでのPRだった。

錬太は千空と一緒にグラウンドにいた。
さきほど一緒にPRをしたばかりだったからだ。

心配して千空の顔を見てみると、やはり固まっていた。
そして呟いた言葉は「自転車の2人のりは道路交通法違反だ。」だった。


「さてさてお持たせしました!アシュリー学園ランキングの発表です!
時間の関係上、各ランキングトップ3のみこちらで言わせてもらいます!
まずは…」
皆が楽しみに待つランキングの発表が始まった。

これを一番気にしているのは征治だった。
いよいよ中高生男子人気ランキングの発表が始まる。

「第3位はー…中等部3年B組宮野敦君!」
一部の方から歓声が聞こえた。おそらく3年B組の塊だろう。
征治はホッとしていた。自分の名前が出なかったことに。
それだけ自信があったのだ。でも1位である自信は無かった。

「第2位はー…」

(来ないでくれ!)

そう心の中で願った。

「高等部2年A組真宮征治君」
終わったと思った。征治にはその後の司会者の言葉はほとんど聞こえていなかった。

「そして第1位はー…高等部1年A組黒羽千空君です!
今年もトップに輝きました!2位とは1票差です!」

「すごいな、あいつ。」
そう呟いたのは悠夜だった。
「当り前ですよ。」
答えたのはまな。
「で、いつ2人で回るですか?」
そう言ったまなに対して悠夜は驚いた顔をした。
「え?」
「だーかーら!いつ2人で回るんですか!2回も言わせないでください!こっちにも都合ってやつがあるです!」
「じゃあ今日!今日の昼からが良い!」

「では、これにて開会式を終わります。アシュリー学園の文化祭開幕です!」
また歓声が起こり人は動きだした。それと同時に一般客が訪れる。
その中に黎明の天秤のメンバーや和輝やローレンスもいた。



「いらっしゃいませー。」
意外とフリーマーケットには客が来た。

「華恋ちゃん、頑張ってるかいー?」
「遊びにきたですよー!」
来たのは明里紗、悠夜、まなだった。

「わあ!ありがとうございます!あれ、3人は?」
「なんか副部長は忙しいみたいだぜ。」
悠夜がそう言うと、なるほど、と華恋は納得した。
千空がいるからこそ喫茶店は繁盛するのだ。
おそらく錬太もその付添だろう。

「へーいろんなものが揃ってるね。」
「よかったら買ってってください。」
華恋は営業スマイルで応えた。

「華恋ー。アクセサリー系ってまだあったー?」
「あー隣の教室にあるよー。」

華恋の方を見ると、明里紗たちがいて水穂は少し動揺した。
「水穂、どうかした?」
「あ、ううん。なんでもないよ。ありがとう。」
そう言って水穂は駆け足で教室を出て行った。

(自分の馬鹿…!なんで動揺するのよ!ここでは上坂水穂じゃない!)

「あの子が華恋ちゃんの友達かー。」
「大人っぽかったですー!」
「なんか変だったな。」
そう言ったのは悠夜だ。

「そうかな?あ、ランキングで上位の3人が来てたからじゃない?」
明里紗は1位、まなと悠夜は3位だったのだ。

「なんか変な気分だね。」
明里紗は笑いながら言った。



「黒羽君、ごめんだけど呼び込み行ってくれない?もしくはここで働いて!
千空君がいないとうちの喫茶店他に負けちゃうかもしれない!」
そうクラスの子に頼まれて、一度は千空は断った。

「負けるとかそういう問題じゃないだろう。」
「だって売上によっては豪華賞品がもらえるらしいよ?」
その一言で男子の雰囲気が変わった。

「千空ー。もちろん働いてくれるよなー?」
そんな雰囲気で断れるはずもなかった。
「千空が行くなら僕も付き合うよ。」
と錬太は言った。


千空と錬太は呼び込みに行くことになった。
グラウンドは人でいっぱいだった。
「じゃあ俺はあっちに行くから、錬太は向こうの方で。」
「わかった。」


「大地君。」
千空と分かれた後、錬太に声をかけたのはクラスの女の子だった。
この間、布を運んであげたときの子だ。

「大変そうだね。手伝おうか?」
クスクスと笑いながら言った。
これは彼女なりに借りを返すつもりなのだろうと思い、錬太は「ありがとう。」と答えた。

アシュリー学園の文化祭はこうして平和に始まった。



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© 浅海檸檬