第50話



「次はどこ行く?」
明里紗が問うとまなが元気良く答える。
「ちあきのクラスが良いですー!」
「さっき会ったじゃんか。」
悠夜がそういう理由は先ほどグラウンドで千空に会ったからだった。

「でも、お腹減ったです。」
まなが片手をお腹まで持っていき、お腹がすいたというような顔をした。
「そうだね。千空のクラスなら紅茶がおいしいはずだしね。」
「あー、ローレンスの買う紅茶か。」
「また呼び捨てにするー!」
すかさずまなが悠夜に注意した。
「別にいいだろ!」
「良くないです!」
「あーはいはい。2人とも行くよ。良くこんなので2人で回るって決めたね。」
「姐御、それはだから、ち…」
「神咲さん。」
まなの言葉を遮るように征治が現れた。

「真宮君。どうしたの?」
「一緒に回らないかなと思って。」
そう言った征治はまなと悠夜を見た。
そして納得したように頷いて言った。

「2人で回らない?」



「姐御を奪われたですー。」
不機嫌そうに言うのはまな。
「仕方ないだろ。本人が決めたんだし。」
悠夜は頭の後ろで手を組みながら歩いている。

「それより腹減ったんだろ。行こうぜ、高等部の1年A組。」
「ちあきと錬ちゃんいるかなー。」
「さあな。」



クラスに着くと千空と錬太はいた。
「何でお前らいるんだ?」
悠夜がとても驚いたように言う。
「俺達のクラスだ。いて何がおかしい。」
「ちょっと前まであそこにいただろ!」
悠夜が指差す方向は窓の外。グラウンドだ。

「ちょうどお昼だから食べに戻ったんだよ。」
錬太が言う。
「錬ちゃん、ボクにもサンドイッチ下さいです!」
「はーい。」
錬太はにっこり笑って、裏方に回った。

「で、明里紗は?一緒じゃないのか?」
「なんか真宮とかいう奴が一緒に回ろうって誘いにきた。」
「あいつか…。」
千空が嫌そうな顔をする。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も、姐御の相手役で、ランキング2位だった人ですよ。」
まなはそんなことも知らなかったのかと言うかのように悠夜に言った。

「おまたせ。サンドイッチだよ。お金はちゃんと払ってね。」
「はいですー!いただきまーす!」
そういうとまなはサンドイッチを食べ始めた。
「飲み物もありますかー?できたら紅茶が良いですー!」
「はいどうぞ。」
そう言って持って来たのは女の子だった。
「あ、ごめんね。僕がしたのに。」
「大地君はゆっくり食べて。」
女の子が過ぎ去っていくと、悠夜は誰だ?と言った顔をする。
「さっき錬ちゃんと一緒にいた女の子です。」
「良く覚えてるな。」
千空が感心したようにいう。
「さっちゃんは良いんですか?」
まながそういうと錬太は喉を詰まらせた。

「そういうのじゃないよ、まなちゃん。」
「ただのクラスメートってことだ。」
千空がフォローに入った。
「それより、もうそろそろ本番だってわかってるよな?」
千空がそう言うと悠夜はハッとしたような顔をする。
「もしかして…忘れてた?」
錬太がきくと悠夜は首を横に激しく振った。
「忘れてたんだな。」
千空にそう言われると悠夜はすごく落ち込んだような顔をした。
そんなにオレはわかりやすい嘘をついたかと。
それにさらに追い打ちをかけるようにまなが言う。
「わかりやすいですね。」



「華恋、ご飯食べにいこ。」
「え、お店は良いの?」
「もう交代してもらおうよ。お腹ぺこぺこ。」
「え、でも…。」
「華恋ちゃん、私たち代わるよ。」
「ほんと?ありがと!じゃあ行こう、華恋。」
「うん!」

水穂がそんなにご飯を食べたがっていたのはお腹が減ったからではなかった。
ただ、今は仕事のことを忘れたい。
そのために目の前にいるガンマとアルデバランから一刻も早く離れたかったのだ。


「さーて、何食べますかー!」
水穂が伸びをしながら言う。
「そうだね…。今日は外で食べたいかも!」
「じゃあ、ちょっとずつ食べよっか。」
「うん。あ、わたしあれ!」
華恋が指差す先にはたこ焼きの表示。
「あ、あたしも!でも焼きそばも捨てがたいな…。」
「もう全部食べちゃおうよ!全部2人でわけっこすれば、大丈夫!」
「華恋のその自信はどこから来るのよ…。でも、やってみようか!」
「うん!」
こうして2人のお昼は始まった。

「姉さん。」
フランクフルトを食べていると景がやってきた。
「どうしたの?」
「あそこのたこ焼きすごくおいしかったよ。全部食べ比べた!」
「そうなの!華恋たこ焼きはあそこに決定ね。」
「たこ焼きはって…まさか全部食べようって言うの?」
景が驚いたように言う。
「うん。華恋とはんぶんこ。華恋とならできそうな気がするの、なんてね。限界まで試してみたいだけ。」
「…楽しそうだね。」
景がポツリと呟いた。
「ん、なんて?」
聞き取れなかった水穂はそう言った。
「ううん。なんでもない!じゃあまたね。」
景は手を振って去って行った。

「ほんとお姉さん思いだよねー。」
華恋が感心したように言う。
「でしょう?あたしの自慢の弟。」
「そっか。」
華恋はそう言って微笑む。
「次はたこ焼きだよ、華恋。行こう!」
「うん!」



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