第6話
次の日千空は大怪我をしていたにもかかわらず、無理してでも学校に行った。
案の定、錬太と華恋が千空を見た途端呆れた顔をした。
「何で来たの。大人しくしてないと駄目じゃないの。」
「千空、いくらなんでも。学校一日休んだって、どうってことないのに。僕なら絶対休むよ。」
「わたしも。こればっかりは千空君には呆れたわ。」
千空が大きなため息をつき言った。
「あんまり怪我人を刺激しないでくれ。」
「「だったら来ちゃだめ!」」
2人の声は廊下に響いた。
昼休み、千空、錬太、華恋、まなの四人は屋上でご飯を食べていた。
千空は簡単に華恋に"トレゾール"や"黎明の天秤"のことを話した。
華恋は冷静に、頭にメモするようにコクリとうなずきつつ聞いていた。昨日のこともあってか、非現実的なことを聞いても驚かなかったのだ。
「そんなに大きな敵組織ならもっと仲間を増やさなくていいの?」
心配そうに言う華恋。
黎明の天秤は人数が多い上に強いのだ。
「仲間を探すことも大変なんだ。今回も華恋を見つけ出すのに少し時間がかかった。霊感だけっていうやつがたくさんいるんだ。」
千空は悔しそうな顔をした。
「華恋ちゃん、能力を持ってる人探し出せる?」
錬太が良い案を思い付いたかのように問うた。
「少し無理があるかな。昨日みたいな人間じゃないものだったらわかるけど、千空君たちみたいな人はすごく近づかなければわからないの。それでも、少し普通の人じゃないってなんとなくわかるって感じ。」
「そっかあ…。」
残念そうに錬太が言った。
「あっ!でもね、調子のいいときだったら、範囲は限られるけど、人の考えてることまでわかることがあるの!」
役にたてるかもしれないと思い、華恋はそう言った。
「調子のいいとき…ですか?」
まなが問うた。
「うーん…。環境とかいえばわかるかな。においとか湿度とか温度とか。微妙だけどその時によって違うでしょう?」
「なるほど。まあこれから訓練すればなんとかなるだろう。」
千空がそう言った。
「じゃあそろそろ教室に戻ろうか。」
錬太がそう良い終えた、そのとき、華恋の動きが止まった。
「何か来た。」
「どこに!?」
千空は焦ってそう言った。
まさか、魔物が出ない昼間から、しかも学校に来るとは考えてもいなかった。
一般人に被害を与えてはいけない。
「職員室…高等部よ!」
「行くぞっ。」
千空の掛け声と共に四人は職員室に向かった。
ガラッ。
先生たちが一斉に四人のほうを見る。
見渡してみたが、怪しい者はいない。
千空が小声で言う。
「華恋、どの人かわかるか。」
「ごめん。わからない。ここ、ごちゃごちゃしして気持ち悪い。」
「くそっ。」
「何をしてるんだ君たち。もうすぐ授業が始まる。教室に戻りなさい。」
メガネをかけた、40代後半くらいの先生が言った。
「先生!何か変なことありませんでした?」
千空が焦って言った。
「何が言いたいんだ君達は。…何も起こっていない。安心しなさい。」
四人は職員室を思い残すように去って行った。
「あの先生はどうだった?」
錬太が華恋に問うた。
あの先生とはさっき千空が問い掛けた先生のことだ。
「ごめん。本当に何もわからない。あの部屋、いろんな花のにおいが充満してた。」
花のにおいのせいで上手く力を使いこなせなかったのだ。
「華恋はそういうことに敏感なのかもしれないな。俺は全然不快に感じなかった。」
「僕考えたんだけど、今さっき華恋ちゃんが気づいたってことは、新しい先生とか生徒に限られない?きっと今日初めて学校に来た人だよ。初日だから、職員室で話し合いみたいな。」
「じゃあ調べてみるです!」
「いや、それもあるけど、何かが操っている可能性もある。」
千空がそう言うとまなはがっかりした様子を見せた。
「とりあえず授業が始まるから戻ろう?」
錬太がそう言った。
「一般人に犠牲が出ないことを祈る。」
千空は手を組んだ。
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