なまえのはなし2
「そういえば、犬飼うって言ってなかったっけ?」
「言ってないよ。」
遊ぼうか、という話になってなんとなく集まった喫茶店。
話を広げようと提供した話題は、何処か情報が間違っていたようだ。
「言ってたよ!」
「…言ってないよ。飼いたいなって言ったことはあるけど。」
「そうだったかなぁ…。」
釈然としない私はしつこく聞くが
「だいたい、うちのマンションはペット禁止。」
という彼女の言葉で諦めた。
「…で?何が言いたかったの?」
若干しょんぼりした私に、彼女が声をかけてくれる。
「名前、今決めようとって言おうと思って。」
「呆れた。そんなもん飼うとしたら家族と決めるわ。」
「も…もしもの話なんだからいいじゃん!」
「はいはい。」
ここまでいいところ無しの私は、意気込んで提案する。
「『ぽち』とかどうかな!」
「却下。」
「はや!」
「馬鹿じゃないの。」
「言っとくけどひらがなだよ!カタカナじゃないんだからね!」
「大差ないでしょうが。」
ひらがなのほうが可愛い雰囲気出るじゃん。
そう落ち込んで言った私を、彼女は完全に子供扱いした。
「はいはい。候補に入れとくから。」
ホントに!絶対だよ!
…てか、飼わないって言ってるじゃん。
c 睦月雨兎